上流工程をやりたいSEへ|任されない理由と、いまの仕事から近づく方法

読者の方

SEとして開発やテストを担当していますが、要件定義や設計などの上流工程をやりたいと思っています。でも、なかなか任せてもらえません。

ぼく

上流工程は、経験がないと任されにくく、任されないと経験が積めない、という壁がありますよね。ただ、いまの仕事の中からでも、上流に近づく経験は作れますよ。

上流工程は、顧客の要望を整理し、システムの形を決める仕事です。年収が上がりやすく、プロジェクトの中心に関われるため、多くのSEが目指す道です。しかし実際には、「経験がないから任せられない」と言われ、何年も下流の工程から抜け出せないと悩む人が少なくありません。

結論から言うと、上流工程に進むために必要なのは「いまの仕事で上流に近い経験を作る」「上流で求められる力を身につける」「任せたいと思われる信頼を積む」「上流に関われる環境を選ぶ」の4つです。設計書を読む側から、疑問を返し、改善を提案する側に回ることで、上流への道は開けます。いまの職場でどうしても機会がない場合は、上流の案件を持つ会社に移ることも有効です。

この記事では、上流工程に進めない理由、上流で求められる力、いまの仕事でできる準備、任されるための動き方、そして環境を変える場合の選び方を説明します。

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目次

上流工程に進めない、よくある理由

まず、なぜ上流工程を任せてもらえないのかを整理します。

理由起きていること変えられる余地
経験がない実績がないため、顧客の前に出す判断ができないある。上流に近い経験を、いまの仕事で作れる
求められる力が見えていない技術は十分でも、調整や説明の力が見えていないある。その力を示す場面を作る
希望が伝わっていない上司が、上流をやりたいと思っていることを知らないある。具体的に伝える
環境に機会がない会社の立場や商流の関係で、上流の仕事そのものがない小さい。環境を変える必要がある

4つ目以外は、いまの職場でも変えられます。自分の状況がどれに当てはまるかを確かめることが、最初の一歩です。

商流の深さで、上流の機会は決まる

多重の下請けの構造では、上流工程は元請けの会社が担当し、二次請け、三次請けの会社には、設計が終わった後の開発やテストの仕事が回ってきます。どれだけ努力しても、会社として上流の仕事を受けていなければ、機会そのものがありません。自分の会社がどの立場で仕事を受けているかを確かめておきましょう。

上流工程の仕事とは

上流工程を目指す前に、どんな仕事なのかを具体的に知っておくと、準備すべきことが見えてきます。

  1. 要件定義:顧客の要望を聞き、システムで実現することを決めて文書にまとめる
  2. 基本設計:画面、帳票、データ、外部とのつながりなど、利用者から見えるシステムの形を決める
  3. 詳細設計:基本設計をもとに、プログラムを作るための内部の仕組みを決める
  4. 見積もりと計画:必要な作業、期間、費用を見積もり、進め方を決める

上流工程というと要件定義を思い浮かべる人が多いですが、まずは詳細設計や基本設計の一部から関わるのが一般的な進み方です。いきなり要件定義を目指すより、設計の工程から段階的に広げていくほうが、機会を得やすくなります。

上流工程の1日は、会議と文書が中心

上流工程の仕事は、顧客や関係者との打ち合わせ、議事録や設計書の作成、内容の確認と修正が中心になります。プログラムを書く時間はほとんどなくなるため、人と話して決めていく仕事にやりがいを感じられるかも、目指す前に考えておきたい点です。

上流工程で求められる力

上流工程では、開発とは違う力が求められます。

力内容身につけ方の例
聞き出す力顧客の要望から、本当の課題を見つける仕様の背景を担当者に聞く習慣をつける
整理する力あいまいな情報を、決まった形にまとめる会議の内容を、論点と決定事項に整理する
説明する力技術の内容を、業務や費用の言葉で伝える作業の報告を、相手の立場に合わせて書く
調整する力立場の違う人の意見をまとめるチーム間の作業の調整を引き受ける
全体を見る力システムや業務の全体の中で、優先順位を決める担当している機能の、前後の処理や業務を調べる

どれも、技術の深さとは別の力です。開発の経験が長い人でも、これらの力を示す場面がないと、上流を任せても大丈夫だと思ってもらえません。

読者の方

技術力を上げれば上流に行けると思っていました。

ぼく

技術力は大切な土台ですが、上流ではそれを相手に伝え、まとめる力が見られます。その力を見せる場面を作っていきましょう。

力を示せる、身近な場面

会議の終わりに決まったことを整理して伝える、他チームとの作業の受け渡しを調整する、仕様の変更を関係者に分かりやすく説明する、といった場面は、どの現場にもあります。こうした場面を自分から引き受けることが、上流の力を見せる機会になります。

いまの仕事で、上流に近い経験を作る

上流工程を任される前から、いまの仕事の中で、上流に近い経験を積むことができます。

設計書を読んで疑問を返す

受け取った設計書で、分かりにくい点、矛盾している点、抜けている点を整理して質問します。

仕様の背景を聞く

なぜこの仕様なのか、業務でどう使われるのかを設計の担当者に聞きます。

改善を提案する

開発やテストで気づいた、使いにくさや無駄を、改善の案として伝えます。

設計の一部を手伝う

小さな機能の設計書の作成や、既存の設計書の更新を引き受けます。

顧客との打ち合わせに同席する

記録係として参加させてもらい、要件がどう決まるかを学びます。

1つ目の「疑問を返す」は、今日からでも始められます。質問の質が高い人は、「この人は設計を理解している」と見られ、設計の相談を受けるようになります。

質問は、「ここが分かりません」だけでなく、「この場合はAとBのどちらの動きを想定していますか」のように、選択肢を示す形にすると、設計の力が伝わります。

テストの担当でも、上流に近づける

テストを担当している場合も、上流に近い経験は作れます。テストの項目を作るときに、設計書のどこに書かれた要件を確かめるのかを意識し、要件の抜けや矛盾を見つけたら報告してください。テストの視点から要件の問題を見つけられる人は、設計の段階で品質を高める役割を任されやすくなります。

任せたいと思われる、信頼の積み方

上流工程は、顧客と直接関わる仕事です。任せる側は、技術だけでなく、仕事の進め方への信頼を見ています。

  1. 報告は、結論から短く伝える
  2. 期限を守り、遅れそうなときは早めに相談する
  3. 問題に気づいたら、自分から共有する
  4. 自分の担当の外にも、目を配る
  5. チームの中で、調整や説明の役割を引き受ける

どれも、上流工程で毎日求められる振る舞いです。いまの仕事でこれらができていると、「顧客の前に出しても大丈夫」と思ってもらいやすくなります。

チームの中で、説明役を引き受ける

新しく入ったメンバーへの仕様の説明や、チーム内の作業の割り振りの説明を引き受けると、説明する力と全体を見る力を示せます。こうした役割を自然にこなしている人は、上司から見て、顧客の前に出しても任せられる人に映ります。

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上流工程を目指すときに、陥りやすい失敗

上流工程を目指す人が、つまずきやすいポイントがあります。

  • 技術の学習だけに力を入れ、説明や調整の力を磨かない
  • いまの仕事を軽く見て、目の前の作業の質が下がる
  • 上流に進めない理由を、会社や上司のせいだけにする
  • 任された一部の設計を、確認せずに一人で進めて手戻りを出す
  • 顧客の前で、分からないことを分かったふりをする

特に2つ目は注意が必要です。いまの作業の質が高く、信頼されている人ほど、上流を任されやすくなります。上流を目指すことと、いまの仕事を丁寧にこなすことは、同時に進めてください。

読者の方

いまの仕事に身が入らなくなりかけていました。

ぼく

その気持ちは分かります。でも、いまの仕事で見せる姿勢こそが、上流を任せるかどうかの判断材料なんですよ。

上司に、希望を伝える方法

上流をやりたいという希望は、具体的に伝えないと、上司には届きません。

  • いつまでに、どの工程を担当したいかを伝える
  • そのために、いまどんな準備をしているかを伝える
  • 上流に近い経験として、何をしてきたかを示す
  • 最初は、一部だけでも担当させてほしいと伝える
  • 足りない力は何かを、上司に聞いておく

「上流をやりたいです」だけでは、上司も何を任せればよいか分かりません。「次の案件で、基本設計の一部を担当したい。いまは設計書の確認と質問の整理を続けています」のように伝えると、機会をもらいやすくなります。

希望を伝えるタイミング

希望は、評価の面談、案件の切り替えの前、プロジェクトの体制が決まる前など、担当が決まる前の時期に伝えるのが効果的です。体制が決まった後では、変更が難しくなります。一度伝えて終わりにせず、半年ごとに準備の進み具合とあわせて伝え続けてください。

初めて上流を任されたときの、進め方

初めて設計の一部や要件の整理を任されたときは、次の点を意識すると、次の機会につながります。

進め方を先に確認する

成果物の形式、確認してもらう人、期限を最初に確かめます。

早めに途中の状態を見せる

全部を仕上げる前に、構成や方向性を見てもらい、手戻りを防ぎます。

分からないことは記録して聞く

顧客の業務や決まりで分からない点は、まとめて確認します。

決まったことを必ず残す

打ち合わせで決まったことと、決まらなかったことを文書に残します。

振り返りを行う

終わった後に、うまくいった点と改善点を上司と話し合います。

2つ目の「早めに見せる」が最も大切です。上流工程の失敗の多くは、方向性がずれたまま作り込んでしまうことから起きます。途中で見てもらうことは、力不足ではなく、上流工程の進め方の基本です。

学習で、上流の知識を補う

実務と合わせて、学習で上流工程の知識を補っておくと、任されたときに慌てずに済みます。

学ぶ分野内容学び方の例
要件定義の進め方要望の聞き取り、要件の整理、合意の取り方要件定義の入門書を読み、自分の現場と比べる
設計の考え方機能、画面、データの設計の基本既存のシステムの設計書を読み込む
業務の知識担当する業界の業務の流れ顧客の業界の用語や仕組みを学ぶ
プロジェクトの管理計画、課題、変更の管理プロジェクトの管理や設計に関する資格の学習を進める

学んだことは、いまの仕事の中で使ってみてください。設計書を読むときに、学んだ考え方と比べて気づいたことを質問にすると、知識が経験に変わります。

学習は、1冊の本を読み切ることより、読んだ内容を1つでも仕事で試すことを目標にすると、続けやすくなります。

職務経歴書で、上流に近い経験を伝える

上流工程を担当したことがなくても、上流に近い経験は、書き方しだいで伝わります。

たとえば、「詳細設計書をもとに開発を担当。設計書の不明点や矛盾を30件以上整理して設計の担当者に確認し、手戻りの防止に貢献。小さな機能の詳細設計書の作成も担当」のように書くと、設計を理解し、上流の担当者と協力してきた経験が伝わります。顧客との打ち合わせに同席した経験や、改善の提案が採用された経験も、具体的に書きましょう。

面接では、「なぜ上流工程をやりたいのか」を必ず聞かれます。「年収を上げたい」だけでなく、「開発の中で、仕様の段階で解決すべき問題を多く見てきたので、要件の段階から品質を高めたい」のように、経験から生まれた理由を伝えると説得力が増します。

上流の経験を積める案件かを、見極める

転職や案件の変更のときは、求人や案件の説明に「上流工程から参画」と書かれていても、実際には一部の資料作成だけ、ということもあります。担当する工程の割合、顧客との打ち合わせに参加するか、設計書を自分で作成するかを具体的に確認してください。

環境を変えて、上流工程に進む

いまの職場で上流の機会がどうしてもない場合は、環境を変えることが近道になることもあります。

移り先上流の機会注意点
元請けのSIer要件定義から担当する案件が多い入社後すぐに上流を任されるとは限らない
事業会社の社内SE自社の業務の要件をまとめる機会がある開発は外部に任せることが多い
商流の浅いSES顧客に近い立場で、設計に関われる案件がある案件の中身を面接で確認する必要がある
ITコンサル業務の課題の整理から関われる資料や分析の力が強く求められる

移る場合は、面接で「入社後、上流工程を担当するまでの流れ」「同じような経歴で上流を担当している人の例」を聞いてください。具体的な答えがある会社ほど、上流に進む道が用意されています。

年代別に見る、上流工程への進み方

上流工程に進む道は、年代によって考え方が少し変わります。

年代意識したいことおすすめの動き
20代技術の土台を固めながら、設計に触れる設計書を読み込み、疑問を返す習慣をつける
30代前半設計の一部を担当し、実績を作る基本設計や詳細設計の担当を具体的に希望する
30代後半要件定義や顧客との調整に関わる打ち合わせの進行や、要件の整理を担当する
40代以降上流の経験を強みに、役割を広げるプロジェクトの管理や、ITコンサルの道も考える

30代のうちに設計の実績を作れるかどうかが、その後の選択肢を大きく左右します。年齢が上がるほど、未経験で上流を任される機会は少なくなるため、希望があるなら早めに動き始めてください。

どの年代でも、いまの自分に足りない経験を1つ選び、次の半年で積む目標にすると、着実に上流へ近づけます。

よくある質問

上流工程をやりたいのに任せてもらえません

経験、求められる力、希望の伝え方、環境のどれに原因があるかを確かめてください。いまの仕事で上流に近い経験を作ることから始めましょう。

下流工程しか経験がなくても上流に進めますか

進めます。設計書に疑問を返す、改善を提案する、設計の一部を手伝う、といった経験を積むと、任される可能性が高まります。

上流工程に必要なスキルは何ですか

聞き出す力、整理する力、説明する力、調整する力、全体を見る力が求められます。

上流工程をやるには転職したほうがいいですか

会社として上流の仕事を受けていない場合は、元請けのSIerや社内SEなど、上流の機会がある環境に移るのが近道です。

上流工程に役立つ資格はありますか

プロジェクトの管理や、システムの設計に関わる資格は、体系的な知識を身につけるのに役立ちます。

まとめ

上流工程に進むには、いまの仕事で上流に近い経験を作り、求められる力を示し、信頼を積むことが大切です。

  • 進めない理由を、経験・力・希望の伝え方・環境の4つに分ける
  • 設計書に疑問を返し、仕様の背景を聞くことから始める
  • 報告や調整で、上流で求められる振る舞いを見せる
  • 希望は、時期と工程と準備を具体的に伝える
  • 機会がない環境なら、上流の案件がある会社に移ることも考える

まずは、次に受け取る設計書を読んで、疑問点を3つ整理して質問するところから始めてください。その質問が、上流工程への最初の一歩になります。

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