読者の方SIerとSES、どちらに行くべきか迷っています。違いがよく分かりません。



契約の形が違うので、働き方も評価のされ方も変わります。順に見ていきましょう。
SIerとSESは、どちらもIT業界の会社ですが、契約の形と、誰の指示で働くかが違います。この違いを知らないまま選ぶと、入社後に想像とのずれが生まれます。
結論から言うと、経験を積みたいならSIer、いろいろな現場を見たいならSESという整理になります。ただし、どちらも会社によって差が大きいため、業態より個別の条件で判断するほうが確実です。
この記事では、2つの違い、それぞれの向き不向き、年収とキャリアの差、そして選ぶときの確認項目を説明します。
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SIerとSESの違いを整理する
まず、基本的な違いを押さえます。
| 項目 | SIer | SES |
|---|---|---|
| 契約の形 | 請負や準委任で、成果や業務に責任 | 準委任で、技術者の稼働を提供 |
| 指示を出す人 | 自社の責任者 | 自社の責任者(現場は客先) |
| 働く場所 | 自社または客先 | 客先が中心 |
| 評価する人 | 自社の上司 | 自社だが、実態は常駐先 |
| 担当する工程 | 要件定義から運用まで | 実装やテストが中心 |
大きな違いは、担当できる工程の幅です。SIerでは要件定義や設計に関われる機会がありますが、SESでは決まった作業を任される形が多くなります。
ただし、SESでも上流を任される案件はありますし、SIerでも下請けの立場では実装中心になります。業態だけで決めつけないことが大切です。
評価のされ方が、いちばんの違い
SESでは、働く場所と評価する人が離れます。常駐先で高く評価されても、自社に伝わらなければ昇給につながりません。評価が届かない構造は、ここから生まれます。
SIerでも常駐はありますが、自社の責任者が現場にいることが多く、成果が伝わりやすくなります。
それぞれの働き方で、1日の流れはどう違うか
想像しやすいように、典型的な1日の流れを比べてみます。
SIerで上流を担当する場合、午前は顧客との打ち合わせや資料の作成、午後は進捗の確認と課題の整理に充てることが多くなります。手を動かす時間より、決める時間と調整の時間が中心です。
SESで実装を担当する場合、常駐先の朝会から始まり、日中は担当する機能の実装とテスト、夕方に進捗を報告する形が一般的です。作業時間は長く確保できますが、決める場には呼ばれないことが多くなります。
どちらが合うかは好みによります。決める仕事に手応えを感じるか、作る時間が長いほうが落ち着くか。自分の向きを考えて選んでください。
向いている人の違い
どちらが優れているという話ではありません。求めるものによって選び方が変わります。
| 求めるもの | 向いている業態 | 理由 |
|---|---|---|
| 上流の経験を積みたい | SIer | 要件定義や設計に関われる |
| いろいろな現場を見たい | SES | 案件が数年ごとに変わる |
| 腰を据えて働きたい | SIer | 同じ案件を長く担当できる |
| 未経験から入りたい | SES | 入社の門戸が広い |
| 年収を早く上げたい | SIer | 商流の上にいるほど単価が高い |
未経験から入る場合、SESのほうが採用されやすい傾向があります。ただし、配属先によって経験の積み方に差が出るため、入社後の動き方が重要になります。
SESで働くなら知っておきたい、指示の受け方のルール
SESは準委任という契約で、本来、作業の指示は自社の責任者が出すものです。常駐先の社員が直接細かく指示を出したり、勤務時間を管理したりする状態は、偽装請負と呼ばれ、法律に反するおそれがあります。
実際の現場では、この線引きがあいまいになっていることも少なくありません。次のような状態が続いていないか、確認してみてください。
- 常駐先の社員から、作業の指示を直接受けている
- 勤務時間や休暇の管理を、常駐先がしている
- 自社の責任者が現場におらず、連絡もつきにくい
- 評価や面談が、常駐先の意見だけで決まる
当てはまるからといって、すぐに違法と決まるわけではありません。ただ、トラブルが起きたときに誰が責任を持つのかが曖昧になりやすい環境です。面接では、現場での指示の流れを必ず確認してください。
年収とキャリアの差
年収と担当工程の目安
長い目で見ると、差が出やすいのは年収よりも経験の中身です。
| 項目 | SIer | SES |
|---|---|---|
| 初任の年収 | 350万〜450万円 | 300万〜400万円 |
| 30代の年収 | 500万〜700万円 | 400万〜550万円 |
| 担当できる工程 | 広い | 案件しだい |
| 転職のしやすさ | 上流経験が評価される | 実装経験が評価される |
表の金額は一例で、会社の規模や地域によって変わります。30代で差が開くのは、SIerでは要件定義や管理を任される人が増える一方、SESでは契約の単価で上限が先に決まりやすいためです。商流の考え方を知っておくと、判断を誤りません。
それぞれの業態で、年収が上がる時期
年収の伸び方にも違いがあります。目安を知っておきましょう。
SIerでは、要件定義や管理を任される30代前後で伸びます。等級の制度が整っている会社が多く、上がり方も予測しやすい傾向です。
SESでは、単価の交渉が反映されるまでに時間がかかります。契約の更新時期にしか変わらないため、実感が遅れがちです。
どちらの業態でも、年収が上がる条件
業態にかかわらず、年収が上がる人には共通の条件があります。
ひとつは、商流の上に行くことです。元請けに近い立場ほど、単価の上限が上がります。もうひとつは、担当する工程を上げることです。決める仕事に近づくほど、金額も上がります。
3つ目は、業務知識を深めることです。特定の業界にくわしい人は、指名で仕事が来るようになります。
この3つは、SIerでもSESでも共通です。会社の名前ではなく、この条件を満たせる環境かどうかで選んでください。
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選ぶときに確認すること
求人を比べるときの、7つの確認項目
業態よりも、次の項目で判断するほうが確実です。
- 自社が元請けとなる案件の割合
- 担当する工程(要件定義から関われるか)
- 配属先の決まり方と、決まる時期
- 常駐の割合と、現場の場所の範囲
- 評価する人が、普段そばにいるか
- 月の平均残業時間(部署単位)
- 直近1年で、社員がどんな案件に入ったか
5つ目は見落とされがちですが、働きやすさに直結します。評価する人が近くにいるかどうかで、誤解が生まれたときの解けやすさが変わります。
求人票に常駐先が書かれていない場合、案件が決まっていないことがあります。面接で必ず確認してください。
同じ業態でも、会社の方針で大きく違う
SESだから経験が積めない、SIerだから安心、という単純な話ではありません。会社ごとの方針のほうが影響は大きくなります。
- 自社開発や元請け案件をどれだけ持っているか
- 新人の配属を、本人の希望を聞いて決めているか
- 同じ現場に自社の社員が複数いるか
- 資格や学習の支援があるか
- 社員の平均勤続年数
5つ目は、働きやすさを映す数字です。極端に短い会社は、入れ替わりが前提の運営になっている可能性があります。
求人票だけでは分からない部分なので、面接で聞いてください。答え方そのものが判断材料になります。
面接で使える、3つの質問
求人票では分からない部分は、面接で確認するしかありません。使いやすい質問を挙げます。
ひとつは、直近1年で入社した人がどんな案件に入ったかという質問です。答えが具体的であれば、配属の見通しが立ちます。曖昧な場合は、案件任せになっている可能性があります。
もうひとつは、自社が元請けとなる案件の割合です。数字で答えられる会社ほど、実態を把握しています。この割合が高いほど、上流の経験を積める可能性も上がります。
3つ目は、評価する人が普段どこにいるかです。常駐が中心の会社では、評価が届きにくくなります。面談の頻度と合わせて確認してください。
労働条件通知書で確かめる4項目
どちらを選ぶ場合でも、書面で確認しておきたい項目があります。
勤務地の記載、みなし残業の時間数、賞与の実績、試用期間中の条件。この4つは、口頭の説明と実際が食い違いやすい部分です。労働条件通知書で必ず確認してください。
とくに勤務地は、常駐の場合「本社および各プロジェクト先」と書かれることがあります。この書き方だと、通勤時間が大きく変わる可能性があります。
未経験から入る場合の選び方
入り口として現実的なのはSES
未経験からIT業界に入る場合、入り口として現実的なのはSESです。採用の門戸が広く、研修から始められる会社も多くあります。
ただし、配属先によって経験の積み方に大きな差が出ます。テストだけを2年続ける現場もあれば、実装まで任される現場もあります。入社前に何を確かめればよいかは、次の項目で説明します。
一方、SIerは選考の基準が高めですが、入れれば上流の経験を積みやすくなります。新卒や第二新卒の枠であれば、SIerも十分に狙えます。
配属の決まり方を確認する
入社後の経験は、配属で大きく変わります。決まり方を確認しておきましょう。
- 配属は、研修の成績で決まるのか、案件の状況で決まるのか
- 本人の希望をどこまで聞いてもらえるか
- 決まる時期はいつか
- 最初の配属は、どのくらいの期間続くか
- 直近1年で、新人はどんな案件に入ったか
5つ目が実態を表します。テストのみの案件が並んでいる場合、最初の1年で積める経験は限られます。
答えが曖昧な会社は、案件任せになっている可能性があります。入社後のずれを防ぐため、必ず確認してください。
未経験から入った人が、2社目で変えたこと
最初の会社で経験が積めなかった場合でも、2社目で立て直せます。実際の例を挙げます。
テスト中心の案件が続いていた人が、元請けの会社に移り、実装から設計まで担当するようになりました。年収も上がり、担当の幅も広がっています。決め手になったのは、障害対応の経験を具体的に書いたことでした。
もうひとつは、常駐が続いていた人が、事業会社の社内SEへ移った例です。複数の業界を見てきた経験が、業者とのやりとりで活きています。
どちらを選んでも、最初の3年でやること
担当する工程を、半年ごとに広げる
業態の違いより、最初の3年で何を担当したかのほうが、その後を大きく左右します。ここで積んだ経験が、次の転職での評価につながるためです。
意識したいのは、担当する工程を少しずつ広げることです。テストから実装へ、実装から設計へ。半年ごとに、任される範囲が変わっているかを確認してください。変わっていないなら、希望を伝える必要があります。
また、業務知識を1つの領域で深めておくと、後の選択肢が増えます。金融でも物流でも構いません。その業界の仕組みを説明できる状態になると、事業会社への転職でも評価されます。
3年たった時点で、担当した工程、扱った技術、決めていた範囲を書き出してみてください。書ける内容が少ないなら、環境を変える判断材料になります。
案件が終わるたびに、記録を残す
業態にかかわらず、最初の3年でやっておくと後が楽になることがあります。
- 担当した案件の規模と役割を、終わるたびに記録する
- 使った技術の名前を、正確に控えておく
- 障害対応の経緯を残す
- 業務の流れを説明できるようにする
- 社内で一番くわしい分野を1つ作る
1つ目と3つ目は、職務経歴書の材料になります。記憶は薄れるため、案件が終わった直後に3行だけ残しておくと、後から助かります。
この5つができていれば、SIerとSESのどちらにいても、次の選択肢は確保できます。
仕様の疑問を、返す側に回る
どちらの業態に入っても、待っているだけでは担当は広がりません。自分から動く必要があります。
効果があるのは、仕様の疑問を返すことです。受け取るだけの立場から、確認する立場に変わると、次の案件での扱いが変わります。
記録を残すことと合わせて、この動き方は業態や商流に関係なく効きます。環境が変わるまでの間も、自分の価値は高められます。
転職市場での評価の違い
数年後に転職するとき、経歴がどう見られるかも知っておきましょう。
| 経歴 | 評価されやすい点 | 補いたい点 |
|---|---|---|
| SIerで上流の経験 | 要件定義、調整 | 実装の経験 |
| SESで実装中心 | 手を動かせる | 判断した経験 |
| どちらも常駐中心 | 複数の現場を知る | 評価の裏付け |
どの経歴でも、担当した工程と決めていた範囲を書けるかどうかで評価が変わります。経歴の種類より、書き方の差のほうが大きいものです。
選んだあとでも、方向は変えられる
SESからSIerへ、SIerからSESへ
最初の選択で決まってしまうわけではありません。
SESからSIerへ移る人は多く、実装の経験があれば評価されます。逆にSIerからSESへ移る人もいますが、こちらは年収が下がることが多いため、目的をはっきりさせておく必要があります。
求人を比べるときは、SE転職に強い転職エージェントのまとめで、商流や担当工程を条件に指定してもらうと選びやすくなります。
合わなかったときの、修正の手順
入ってから想像と違った場合も、修正の手段があります。
まず、担当の変更を希望として伝えます。次に、社内公募や異動の仕組みがあるかを確認します。半年たっても変わらないなら、その会社の方針だと考えて構いません。
早めに動くほど、経歴の傷も小さくなります。合わない場所で年数を重ねるより、判断は早いほうが有利です。
SIerとSES以外の選択肢も、比べておく
IT業界の入り口は、SIerとSESの2つだけではありません。働き方の希望によっては、ほかの業態のほうが合うこともあります。
| 業態 | 仕事の中身 | 入りやすさ |
|---|---|---|
| 自社開発の会社 | 自社のサービスを作り、改善を続ける | 実装の経験が求められる |
| 事業会社の社内SE | 自社の業務を支え、業者とやりとりする | 業務知識があると有利 |
| SIer | 顧客のシステムを、上流から作る | 新卒や第二新卒なら狙える |
| SES | 客先で、技術者として作業を担う | 未経験でも入りやすい |
最初の会社で経験を積み、2社目で自社開発や社内SEへ移る道もあります。いまの選択を、最後の選択だと考える必要はありません。
よくある質問
- SESはやめたほうがいいですか
-
一概には言えません。上流に関われる案件を持つ会社なら、経験は積めます。配属の決まり方を確認してください。
- 未経験ならどちらがいいですか
-
入りやすいのはSESです。ただし、研修と配属の仕組みを必ず確認してください。
- SESからSIerに移れますか
-
移れます。実装の経験と、障害対応の実績があれば評価されます。
- 年収はどのくらい違いますか
-
30代で100万円以上の差がつくこともあります。商流と担当工程の違いが理由です。
- どちらも常駐がありますか
-
あります。割合が違うだけなので、面接で数字を確認してください。
まとめ
違いは業態の名前ではなく、契約の形と担当できる工程です。
- SESは稼働を提供する契約で、実装中心になりやすい
- SIerは上流から関われるが、下請けなら同じことが起きる
- 評価する人が近くにいるかが、働きやすさを左右する
- 業態ではなく、商流と工程で判断する
- どちらからでも移れるので、最初の選択で決まらない
迷ったときは、会社の名前ではなく契約の形を確かめてください。そこが分かれば、入社後の働き方も見通せます。
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