読者の方毎月の残業が60時間を超えています。この状態、普通なんでしょうか。



普通ではありません。しかも、原因の多くは個人の働き方ではなく、仕組みの側にあります。
SEの残業が多いのは、能力が低いからではありません。見積もりの決まり方、商流の位置、仕様変更の扱い方という3つの仕組みが、そのまま残業時間に表れています。
結論から言うと、残業を減らしたいなら、自分の作業効率より先に、仕組みのどこに原因があるかを確かめてください。原因が商流にある場合、個人の工夫では限界があります。
この記事では、残業が生まれる仕組み、いまの職場で減らせる部分、残業の少ない会社の見分け方、そして限界を超えたときの対処を説明します。
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SEの残業が多くなる3つの仕組み
まず、どこで残業が生まれているのかを分けて考えます。
| 仕組み | 起きていること | 個人で減らせるか |
|---|---|---|
| 見積もりが甘い | 営業が取ってきた金額と期間に、人数を合わせている | ほぼ減らせない |
| 商流が深い | 上の会社の遅れが、そのまま下に来る | 減らせない |
| 仕様変更の扱い | 追加の要望が、無料で受け入れられている | 記録次第で減らせる |
| 作業のやり方 | 手順が属人的で、確認に時間がかかる | 減らせる |
上の2つは、個人の努力ではどうにもなりません。会社の方針で決まっている部分だからです。ここが原因なら、会社を変えるのが最も確実な対策になります。
見積もりの段階で、残業が決まっている
受注金額と納期が先に決まり、その枠の中に作業を詰め込む。この順番である限り、無理は現場に集まります。働く人の人数を増やせない以上、あふれた分は時間で埋めるしかないからです。
この構造は、元請けか下請けかで大きく変わります。元請けは顧客と直接交渉できるため、納期や機能の調整ができます。下請けでは、決まった条件がそのまま降りてきます。
仕様変更が記録されないと、際限なく増える
口頭で受けた追加の要望を、そのまま作ってしまう。これが積み重なると、当初の計画にない作業が増え続けます。しかも記録がないため、遅れの理由も説明できません。
対策は簡単で、決まったことを必ず記録に残すことです。変更の内容、依頼した人、影響する期間を残すだけで、次からの交渉材料になります。



断るためではなく、話し合うために記録します。これだけで残業が月10時間以上減った現場もあります。
いまの職場で減らせる残業
仕組みが原因でも、自分で減らせる部分はあります。効果の大きい順に挙げます。
- 変更の内容を記録に残す
- 確認の回数を決めて、まとめて行う
- 手順を文書にして、質問を減らす
- 先に相談する時間を作り、手戻りを防ぐ
- 自分の作業時間を1週間記録する
5つ目は地味ですが、いちばん効きます。何にどれだけ時間を使っているかが分かると、削れる作業と削れない作業が区別できます。上司に相談するときの材料にもなります。
記録した数字は、交渉のときに強い武器になります。感覚で「忙しい」と伝えるより、確認作業に週8時間使っていると示すほうが、具体的な対策につながります。
残業が減らない職場の特徴
どれだけ工夫しても減らない職場には、共通点があります。
- みなし残業が月40時間以上で、それを前提に計画が組まれている
- 人が抜けても補充されない
- 仕様変更を断らない方針になっている
- 残業時間を短く申告する慣習がある
- 上司自身が残業を減らす気がない
とくに5つ目が重い問題です。上司が現場の負荷に関心を持たない職場では、仕組みが変わることはまずありません。
残業時間を短く申告させる職場は、記録が残らないため、体調を崩したときに証明ができません。この状態が続いているなら、転職を早めに検討してください。
1つでも当てはまるなら、一度相談しておくと安心です
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残業の少ない会社を見分ける方法
求人票と面接で確かめられる項目があります。ここを外さなければ、入社後のずれはかなり減ります。
- 月の平均残業時間が、部署単位で示されているか
- みなし残業の時間と、超えた分の扱い
- 自社開発か受託か、元請けか下請けか
- 夜間や休日の対応の有無と、その回数
- 有給の取得率と、連続で取れるかどうか
3つ目が本質的な部分です。同じSEでも、自社開発と多重下請けでは残業の出方がまったく違います。常駐で働く場合の実情も確認しておくと、求人の見え方が変わります。
面接で残業について聞くと不利になると心配する人がいますが、逆です。長く働く前提で確認している姿勢は、まともな会社ほど歓迎されます。



残業のことを聞くと、やる気がないと思われませんか。



思う会社なら、入らないほうが正解です。質問は、会社を見分ける道具でもあります。
残業が月80時間を超えているときの対処
残業が月80時間を超える状態が続いているなら、これは働き方の問題ではなく健康の問題です。
出退勤の時刻を、自分でも控えます。入退館の記録や送信履歴も証拠になります。
上司に体制の見直しを依頼します。改善されない場合は、社内の相談窓口へ。
睡眠が取れない状態が続くなら、早めに医療機関で相談してください。
いまの条件が業界でどの位置にあるのかを確かめます。
改善の見込みがないなら、転職の準備を進めます。
体調に影響が出ている段階では、我慢が解決策にはなりません。判断できるうちに動くことが、いちばんの自衛になります。
残業が減ると、年収はどうなるか
残業代が減る分、総支給額は下がることがあります。ただし、比べるべきは時間あたりの金額です。
| 例 | 年収 | 月の残業 | 時間あたりの考え方 |
|---|---|---|---|
| いまの会社 | 480万円 | 60時間 | 残業代込みで成立している |
| 転職先A | 480万円 | 10時間 | 同じ年収で時間が増える |
| 転職先B | 450万円 | 10時間 | 年収は下がるが、生活は楽になる |
転職先Bのように年収が少し下がっても、月50時間の自由な時間が戻るなら、学習にも家庭にも使えます。数字を並べて比べると、判断がしやすくなります。
求人票の年収が「みなし残業を含む」場合は、その時間数を必ず確認してください。含まれている時間が多いほど、実質の時給は下がります。
労働時間のきまりを知っておく
交渉するときに強いのは、感情ではなく事実とルールです。残業には法律上の上限があり、会社はそれを超えて働かせることができません。
| 区分 | 上限の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 原則 | 月45時間、年360時間 | 労使の協定が前提 |
| 特別な事情がある場合 | 年720時間まで | 月100時間未満、複数月の平均80時間以内 |
| 健康への影響 | 月80時間超が目安 | 過重労働として問題になる水準 |
月80時間を超える残業が続いている場合、会社側もリスクを抱えています。記録を残して相談すれば、体制の見直しにつながることがあります。逆に、記録がないと、あとから証明ができません。
入退館の記録、勤怠の申請、送信した時刻の残るやりとり。これらは自分でも控えておいてください。会社の記録が実態と違う場合、自分の記録が唯一の証拠になります。
繁忙期を乗り切るための、現実的な工夫
どうしても残業が増える時期はあります。そこを最小限にするための工夫を挙げます。
- 優先順位を、着手前に合意しておく
- 完成の基準を、あいまいにしない
- 確認の依頼は、まとめて送る
- 手が空いている人に、先に渡せる作業を用意しておく
- 山を越えたあとの休みを、先に予定に入れる
2つ目は、終わらない残業の大きな原因です。どこまでやれば完了かが決まっていないと、細かい修正が延々と続きます。着手前に合意しておくと、判断の基準がはっきりします。
5つ目も効果があります。繁忙期のあとに休みを取る前提で動くと、体力の回復が早くなります。終わってから考えると、次の案件が始まってしまい、結局休めません。
交渉が通った例と、通らなかった例
同じ相談でも、伝え方で結果が変わります。
| 伝え方 | 結果 | 理由 |
|---|---|---|
| とにかく忙しいので減らしてほしい | 通りにくい | 何を減らすのか決められない |
| 確認作業に週8時間かかっている | 通りやすい | 削る対象がはっきりする |
| このままでは納期を守れない | 通りやすい | 会社側の問題になる |
| 体調に影響が出ている | 対応されやすい | 安全配慮の義務がある |
数字と事実で伝えると、相手も動きやすくなります。感情を抑える必要はありませんが、材料をそろえてから話すほうが、結果につながります。



伝え方でここまで変わるんですね。



はい。記録さえあれば、あとは並べて見せるだけです。
残業を前提にした働き方から抜けるには
残業が当たり前の職場に長くいると、それが普通だと感じるようになります。定時で帰る人を見て、珍しいと思うようになったら、感覚がずれ始めているサインです。
抜け出すためにまずやることは、他社の実態を知ることです。月の平均残業が10時間台の会社は実際にあります。求人を並べて数字を見ると、いまの職場がどの位置にあるかが分かります。
次にやることは、自分の時間の使い方を決めることです。何時に帰ると決め、そこから逆算して作業を組む。全部は終わらなくても、優先順位を決めて相談する形に変えると、働き方そのものが変わっていきます。
残業が理由で辞めるとき、面接でどう伝えるか
残業の多さを理由に転職する人は多く、それ自体は不利になりません。ただし、伝え方で印象が変わります。
| 伝え方 | 受け取られ方 |
|---|---|
| 残業が多くて疲れました | 我慢が足りないと見られることがある |
| 学ぶ時間を確保して、設計まで担当したい | 前向きな理由として伝わる |
| 体調に影響が出たため、働き方を見直したい | 事実として受け止められる |
真ん中の伝え方がもっとも無難です。残業を減らしたい理由が、休みたいからではなく、力を伸ばすためだと伝わると、志望動機ともつながります。
残業の実態を、数字でつかむ
減らす前に、いまの状態を正確に知る必要があります。1週間だけ記録を取ってください。
- 作業ごとにかかった時間
- 会議に使った時間の合計
- 確認や待ちで止まっていた時間
- 仕様変更の対応にかかった時間
- 定時後に発生した依頼の件数
3つ目に意外と時間が取られています。誰かの返事を待つ間に別の作業へ移れていないと、1日の中で30分から1時間が失われていることがあります。
記録が取れたら、いちばん時間を使っている項目を1つだけ選び、減らす方法を考えてください。全部を一度に変えようとすると続きません。
残業を減らす交渉が通った例
実際に減らせた例を挙げます。共通しているのは、感情ではなく数字で伝えている点です。
| 状況 | 伝え方 | 結果 |
|---|---|---|
| 確認待ちが多い | 週8時間が待ちで消えていると報告 | 確認の時間を朝夕にまとめた |
| 仕様変更が多い | 変更が月12件あると記録を提示 | 変更の受付を週1回に限定 |
| 人が足りない | 担当作業の一覧と所要時間を提出 | 1名の増員が決まった |
| 会議が多い | 週の会議時間が14時間と報告 | 定例を隔週に変更 |
どれも、記録がなければ通らなかった交渉です。忙しいという言葉だけでは、相手も何を変えればよいか判断できません。
それでも減らないときの選択
会社の方針として残業が前提になっている場合、個人の工夫では限界があります。
判断の目安は、相談してから3か月です。体制の見直しが検討されないなら、その組織に変える意思がないと考えて構いません。
その場合は、残業の少ない会社へ移るほうが早く解決します。求人票では、部署単位の平均残業時間と、みなし残業の時間数を必ず確認してください。実態と説明が食い違わないよう、書面で残すことも大切です。
休みを取れない状態を、当たり前にしない
残業が多い職場では、有給も取りにくくなります。ただ、休めない状態が続くと、回復が追いつかなくなります。
まず確認したいのは、自分の有給の残日数と、部署の取得率です。取得率が低い職場では、個人で申請しづらい空気ができています。上司に前例を作ってもらうか、閑散期にまとめて申請するのが現実的です。
もうひとつは、連休の取り方です。1日ずつ取るより、案件の区切りで3日以上まとめて取るほうが回復します。予定を先に入れてしまうと、休みやすくなります。
残業が多い職場で、体調を守る工夫
環境が変わるまでの間も、できることがあります。
- 就寝時刻を固定し、睡眠時間を先に確保する
- 残業の上限を自分で決め、超えたら翌日に回す
- 昼休みは席を離れる
- 週に1日は定時で帰る日を作る
- 体調の変化を記録しておく
2つ目は、実行しづらく感じますが効果があります。夜遅くの作業は効率が落ち、ミスも増えます。翌朝に回したほうが、結果的に早く終わることも多いものです。
案件の途中で、残業が増え始めたときの合図
残業は、ある日突然増えるわけではありません。前兆があります。早めに気づけば、手を打てます。
- 仕様の確認に対する返事が遅くなってきた
- 決まっていない項目が、着手時より増えている
- メンバーの誰かが遅くまで残る日が続いている
- 打ち合わせの回数が増えた
- 当初なかった作業が割り込んできた
2つ目が出たら要注意です。決まらない項目が増えるほど、後半に作業が集中します。この段階で、決める期限を関係者と合意しておくと、後の残業を防げます。
前兆に気づいて早く相談した案件と、直前まで我慢した案件では、最終的な残業時間がまったく違います。
繁忙期が終わったあとに、必ずやること
山を越えたあと、そのまま次の案件に入ってしまう人が多いのですが、ここで振り返りをしておくと、次の残業を減らせます。
確認するのは3点です。どの工程で時間が膨らんだか、原因は見積もりか仕様変更か人数か、次に同じ状況になったときに何を先に手配するか。
記録に残しておくと、次の見積もりのときに根拠として使えます。感覚ではなく実績で話せる人は、無理な計画を止められるようになります。
あわせて、休みを取る日程も決めてください。区切りで休まないと、疲れが翌月に持ち越されます。
よくある質問
- SEの残業は平均でどのくらいですか
-
会社によって差が大きく、月10時間程度の会社もあれば、60時間を超える会社もあります。商流と開発の形で決まります。
- 残業を断ることはできますか
-
体調や家庭の事情を理由に相談することはできます。記録を添えて相談すると、話が進みやすくなります。
- みなし残業は違法ではないのですか
-
制度自体は認められています。ただし、超えた分は支払われる必要があります。支払われていない場合は、記録を残してください。
- 残業の少ない会社に移ると、スキルが落ちませんか
-
落ちません。むしろ学習の時間が取れるため、身につく速さは上がります。
- 転職先の残業時間は、どう確認すればいいですか
-
面接で部署単位の平均を聞き、労働条件通知書でみなし残業の時間を確認します。
まとめ
残業の多さは、能力ではなく仕組みが生んでいます。
- 見積もりと商流が、残業のほとんどを決めている
- 仕様変更は、記録に残すだけで減らせる
- 作業時間の記録が、交渉の材料になる
- 求人票では、平均残業とみなし残業を必ず確認する
- 月80時間を超える状態が続くなら、健康を優先する
自分のやり方を変えても減らないなら、それは環境のせいです。責めるべきは自分ではなく、仕組みのほうだと考えてください。
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